判例時報2532号89頁に拙稿「SBS/AHT仮説をめぐる日本と海外の議論状況」が掲載された。
日本でもようやくSBS/AHT仮説をめぐる問題が認識されるようになってきたが、医学界でも、司法、行政の分野でも、なお国際的な議論状況についての認識は不十分だと言わざるを得ない。
刑事訴追について言えば、転倒や低位落下などの外力エピソードがある場合には、捜査機関もある程度慎重になってきたようにも思えるが、そのようなエピソードがない場合には、なお訴追が相次いでいる。しかし、海外では、SBS/AHTの三徴候は、外力以外の内因でも生じうることが次々と指摘されるようになっている。このままでは、日本では内因による乳幼児の突然死の多くが虐待として訴追されかねない。
拙稿は、国内外の議論状況を俯瞰するには甚だ不十分であるが、これらSBS/AHT仮説をめぐる様々な問題を考える一助になれば幸いである。
なお、刑事法ジャーナル74号の「特集・児童に対する暴力」の論文として掲載された久保有希子弁護士の「児童に対する暴力をめぐる刑事弁護」(100頁)でも、SBS/AHT仮説をめぐる議論状況についての論及されている。併せて一読されたい。
投稿者プロフィール
- 1989年大阪弁護士会登録。刑事弁護に憧れて弁護士に。WINNY事件、大阪高検公安部長事件、大阪地検特捜部犯人隠避事件、FC2事件、SBS/AHT事件、プレサンス元社長冤罪事件などにかかわる。大阪弁護士会刑事弁護委員会委員長、日弁連刑事弁護センター事務局長、委員長などを歴任。現在、SBS検証プロジェクト共同代表。
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