『負けへんで』出版のお知らせ

冤罪

『負けへんで』が出版されました

私と秋田真志弁護士が弁護団の一員として担当したプレサンス元社長冤罪事件について、元被告人の山岸忍氏が体験記として『負けへんで! 東証一部上場企業社長vs地検特捜部』を出版されました。

あらすじ

検察は正義ではなかった
無実の罪によって逮捕され、創業した会社を失い、248日間にわたり勾留された男が、完全無罪を勝ち取るまでの全記録。

●プレサンス元社長冤罪事件とは?
2019年12月、大阪の不動産ディベロッパー、プレサンスコーポレーションの山岸忍社長は、業務上横領容疑で大阪地検特捜部に逮捕・起訴され、以後248日間にわたり勾留された。しかし特捜部の捜査はずさん極まりないもので、一審で無罪。大阪地検が控訴を断念するほどの「完勝」だった。検察の見立てはまったくの誤りで、ここまでひどい捜査は珍しく、第2の村木事件と称される冤罪事件となった。

●上場企業の社長が逮捕されたとき、何が起きる?
プレサンスコーポレーションは東証一部上場、売上2000億円企業だった。その創業社長が逮捕された影響はすさまじかった。株価は急落し金融機関は資金をストップ。瞬く間に会社は危機に陥った。打てる手は自分の辞任のみ――山岸氏は拘置所の中から辞任届を提出。さらにライバル企業のトップと拘置所の面会室で会い、上場企業の売却を進めたのだった。

●録音・録画が明かした密室の取調べ
本書は事件の発端から、山岸氏と、元検事・元判事・刑事弁護の専門家・企業法務の専門家などの最強弁護団が完全無罪を勝ち取るまでを、描出するものだ。特に、大阪地検の証拠捏造事件の結果導入された可視化策により、録音・録画された検事の取調べの様子を、膨大な努力によって解析したことは大きかった。法廷で、初めて密室での検事の取り調べの模様が明らかになったのは画期的だった。そこでは罵倒、恫喝、脅迫まがいの取り調べが堂々と行われていたのだった。

(Amazon商品ページより引用)

売れ行きと感想

発売直前には、大阪地方裁判所が取調官の言動について特別公務員暴行陵虐罪の嫌疑を認めて話題になりました(詳細は「裁判所が田渕大輔検察官による「陵虐」行為を認定ー検察官が犯罪しても不起訴か?」参照)。

同書籍は話題を呼んで発売前から増刷が決定し、発売直後からAmazon新着ランキング1位(法律、社会・政治)、ジュンク堂書店難波店ランキング1位(政治・経済・法律、4/19~15)と好評発売中です。

SNS上では各界から次のような感想がありました。

弁護人としてコメント

えん罪というと、まずはその凄惨さにスポットライトが当てられます。私自身、山岸さんが冤罪で苦しんでいるところを一番近いところから見ていたので、冤罪の恐怖が看過されてはならないと思っております。もっとも、先日アメリカのイノセンス・ネットワークの国際大会に出席した際、何十年も服役した人や死刑から生還した多くの方々が、その苦境に人生をつぶされて嘆くのではなく、胸を張って堂々と人生を楽しもうとする姿も目にしました。山岸さんもまさにその一人で、自身が「被害」に遭ったと後ろ向きになるのではなく、前向きに毎日を楽しく暮らされているそうです。この『負けへんで』という言葉にも、そんな山岸さんの前向きな姿勢が表れています。

そして、山岸さんと私は「もう二度とこのような事件を起こしたくない」という共通の願いを持っております。山岸さんはそのような想いをもとに体験記『負けへんで』を残し、私は法律家として冤罪原因の検証報告「冤罪の構図」を記しました。冤罪事件を防ぐため、一人でも多くの方に読んでいただくことを願っております。

投稿者プロフィール

西愛礼
西愛礼
2016年千葉地方裁判所判事補任官、裁判員裁判の左陪席を担当。2021年依願退官後、しんゆう法律事務所において弁護士として稼働。冤罪の研究及び救済活動に従事。イノセンスプロジェクトジャパン運営委員。日本刑法学会、法と心理学会所属。