しんゆう法律事務所の弁護士は、弁護士会等の研修を講師側・受講生側の双方で積極的に参加しています。
今回は、私が受講生側として実際に参加した大阪弁護士会主催の法廷弁護技術研修の体験記を書かせていただきます。
一般的な弁護士会の研修は、1~2時間程度の講義を聴講する形式が一般的です。
しかし、この法廷弁護技術研修、一般的な研修とは全く異なり、なんと2日間丸々朝から晩まで、講師・受講生共に実演ありの超本格的な研修です。
この研修はNITA研修といって、NITA(National Institute for Trial Advocacy、全米法廷弁護技術研究所)が確立した法廷弁護技術の指導方法に倣って行われています。
私が参加した法廷弁護技術研修も、大阪の清水伸賢弁護士、髙山巌弁護士、鈴木一郎弁護士らが講師として講演を行い、東京の赤木竜太郎弁護士と千葉の虫本良和弁護士が実演を行うなど、日本の刑事弁護の錚々たるメンバーにご指導をいただくことができました。
1日目:
研修用教材を用いて、ブレインストーミング、冒頭陳述、主尋問の実演を行いました。
特に冒頭陳述・主尋問の実演については、受講生一人一人が発表をするのですが、当然メモを持つのは禁止で、ペーパーレスで行わなければなりません。
実演後、各講師からクリティークを頂けます。声の大きさだけではなく、立ち方、手の使い方、視点、テンポ、リズムなどの一挙手一投足、そして内容や構成について細かく反省点と改善点を教えてもらえます。講師側も基本的にはメモを見ずにクリティークをし、その場で改善したものを実演していただいたりもしました。
次の受講生が発表している間に、自分の実演を録画したものをSDカードで受け取って、別室でビデオクリティークを頂けます。講師から言われた点をここで再確認しつつ、自分がどう見えているのかを別の講師と確認するのです。
受講生の実演が終わったら、講師によるデモが行われます。赤木竜太郎先生による素晴らしい冒頭陳述の実演でした。講師の実演を見て、自分の中の理想像をより具体的にイメージすることができました。
夜は、翌日の実演に向けて自宅で猛練習です。頂いた助言をもとに、何度も何度も練習します。
2日目:
反対尋問、弁論の実演を行いました。
基本的な流れは前日と同じですが、反対尋問と弁論は刑事弁護の山場であり力量の見せどころ、講師・受講生双方熱が入ります。
反対尋問の実演では予め考えていた尋問がある程度成功し、こちらにとって有利な証言を引き出すことができてほっとしていたところ、「こうすればもっと良くなる」という助言と実演を頂きました。刑事弁護技術は職人技であり、どこまでも改良することができることを体感しました。
そして最後、前日の夜に何度も練習した弁論の実演です。
前日に助言をいただいたテンポ、視線、自分で改良をしようと思った声色・口調、直前に気が付いた新しい切り口など、頭の中で色々なことが駆け巡ります。自分でも確かな成長を実感しました。
講師からは主に主張の構成についてクリティークをいただいたのですが、「もっと聞いていたかったですね」と言っていただけて嬉しかったです。
最後は虫本良和先生に弁論のデモを見せていただきました。これもまた本当に素晴らしかったです。もっと技術を磨きたい、聞いていてそう思いました。
最後に修了証をいただいて、2日間の研修は終了です。
練習すればするだけ上手になる、そして上手になっていくのが自分でも実感できて楽しい、もっと上手になりたい、それが感想でした。法廷技術については色々な書籍も読みましたが、やはり自分が実演したうえ、上手な方々の実演を見て学ぶのが一番の上達方法だと思いました。
これからも精進していきたいと思っております。
投稿者プロフィール

- 2016年千葉地方裁判所判事補任官、裁判員裁判の左陪席を担当。2021年依願退官後、しんゆう法律事務所において弁護士として稼働。冤罪の研究及び救済活動に従事。イノセンスプロジェクトジャパン運営委員。日本刑法学会、法と心理学会所属。
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