なぜ、プレサンス社元社長は無罪になったのか。-可視化の威力

刑事弁護

本日、大阪地裁第14刑事部(坂口裕俊裁判長、湯川亮裁判官、若園怜裁判官)は、業務上横領罪で起訴された元プレサンスコーポレーション社長山岸忍さんに無罪判決を言い渡した。判決は、大阪地検特捜部の取調べ担当検察官が、山岸さんとの共謀を疑われた部下(すでに猶予付有罪判決が確定)の取調べで、(山岸さんに説明をしていなかったとすれば)「確信的な詐欺である、今回の事件で果たした(部下の)役割は、共犯になるのかというようなかわいいものではない、プレサンスの評判を貶めた大罪人である、今回の風評被害を受けて会社が被った損害を賠償できるのか、10億、20億では済まない、それを背負う覚悟で話をしているのか」などと発言したと認定した上で、「このような検察官の発言は、部下に対し、必要以上に強く責任を感じさせ、その責任を免れようとして真実とは異なる内容の供述に及ぶことにつき強い動機を生じさせかねない」、(上記発言が、部下供述の)「変遷の一因となった可能性を否定することはできない」とし、山岸さんと共謀したかのような内容の部下の供述の信用性を明確に否定した。この認定は、部下の身体拘束中の取調べの全過程が可視化(録音・録画)されていたことによるものである。まさに2016年に制度化された取調べの可視化が威力を発揮したものと言える。詳細については、改めて述べることにしたいと思う。

投稿者プロフィール

秋田真志
秋田真志
1989年大阪弁護士会登録。刑事弁護に憧れて弁護士に。WINNY事件、大阪高検公安部長事件、大阪地検特捜部犯人隠避事件、FC2事件、SBS/AHT事件、プレサンス元社長冤罪事件などにかかわる。大阪弁護士会刑事弁護委員会委員長、日弁連刑事弁護センター事務局長、委員長などを歴任。現在、SBS検証プロジェクト共同代表。